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監修:札幌医科大学医学部泌尿器科学講座 教授 舛森 直哉 先生

薬物療法

診断 手術療法 再発 薬物療法

薬物療法

腎細胞がんの治療は、手術療法が最も有効な治療法とされています。しかし、再発した場合や切除できない場合は、従来の抗がん剤の治療は行わず、免疫療法や分子標的薬治療が行われています。初めて行う薬物療法を「1次治療」といい、1次治療で十分な効果が得られなかった場合には薬剤を変更して「2次治療」を、2次治療で十分な効果が得られなかった場合には、さらに薬剤を変更して「3次治療」を行います。どの薬剤を使うかは、一般的にはMSKCCリスク分類を基に、患者さんの状態や希望などを考慮した上で選択されます。

免疫療法

免疫とは病気になるのを防いだり、一度かかった病気になりにくくする自己防衛反応のしくみですが、腎細胞がんでは、がんの発生や進行が免疫と関わっていることがわかって、さまざまな免疫療法が行なわれてきました。なかでも、インターフェロンやインターロイキン2を用いたサイトカイン療法は、10~15%の患者さんに効果が期待できることから、特に遠隔転移がみられる患者さんに広く行われてきました。これらの併用療法も試みられています。

インターフェロン
インターフェロン(IFN)のがんに対する作用は、リンパ球などの免疫細胞を活性化し、そのリンパ球ががん細胞を破壊する間接的な作用と、IFN自体ががん細胞に直接作用して破壊する2通りの作用が考えられています。腎細胞がんには、IFN-αとIFN-γが用いられています。

インターロイキン2
インターロイキン2(IL-2)のがんに対する作用は、リンパ球などの免疫細胞を活性化し、そのリンパ球ががん細胞を破壊する間接的な作用で、直接的な作用は認められていません。

分子標的薬

かつてはサイトカイン療法が無効となった場合には、治療の選択肢がありませんでした。しかし、腎細胞がんの発がんメカニズムが解明されるにつれ、いくつもの分子標的薬が開発され、広く使用されるようになってきました。分子標的薬とは、がん細胞の増殖にかかわる分子の働きを抑えることにより、がんの進行を抑える薬剤です。

現在、腎細胞がんに使用される分子標的薬には、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)とmTOR阻害薬があります。通常、手術できないまたは遠隔転移があるIV期の腎細胞がんに適応されますが、腎摘除術前や転移部位切除前に術前補助療法として使用されることもあります。

免疫チェックポイント阻害薬

人間には、細菌やウイルスなどの病原体などから体を守る「免疫」という働きがあります。免疫は自分ではない異物を攻撃して体から排除しており、がん細胞も異物とみなされて攻撃を受けます。ただし、がん細胞は自分を攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)の働きを下げてしまう「免疫チェックポイント」という仕組みをもっています。この「免疫チェックポイント」を阻害して、CTLが本来のようにがん細胞を攻撃できるようにする薬剤が「免疫チェックポイント阻害剤」です。
現在、腎細胞がんに使用される免疫チェックポイント阻害剤には、PD-1抗体製剤があります。通常、手術できないまたは遠隔転移があるIV期の腎細胞がんに適応されます。

MSKCCリスク分類
MSKCCリスク分類とは、5つの予後因子がいくつ当てはまるかによって、その後の経過(予後)の予測を3つに分類するものです。予後因子が1つも当てはまらない場合はfavorableリスク(低リスク)、1~2個当てはまる場合はintermediateリスク(中リスク)、3個以上当てはまる場合はpoorリスク(高リスク)となり、当てはまる数が少ないほど予後が良好と期待されます。

MSKCCリスク分類の5つの予後因子

  • 1.全身状態のスコア(KPS)が80%未満
  • 2.血清LDH値が正常上限の1.5倍以上
  • 3.Hb(ヘモグロビン)値が正常下限値未満
  • 4.補正カルシウム値が10mg/dL以上
  • 5.腎がんの診断から治療開始までの期間が1年未満
  予後因子の数
Favorable リスク(低リスク) 0個
Intermediate リスク(中リスク) 1~2個
Poor リスク(高リスク) 3個以上

日本泌尿器科学会 編:腎癌診療ガイドライン2011 年版, 金原出版, 25-27(2011)より改変

BSC(ベストサポーティブケア)

BSCとは、積極的ながんの治療は行わず、苦痛を軽くするための治療に徹することをいいます。がんを小さくする治療が期待できない場合に、あるいは患者さんの希望に応じて、がんによる痛みや治療の副作用を軽減したり、QOL(生活の質)を高めたりすることを目的としたケアです。

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